漢方と解剖学

漢方の理論で隠喩五行があります。

陰と陽。木火土金水という五行。

五行の中に、五臓があります。

肝・心・脾・肺・腎の五臓です。あれ?と思われた方!

 

そうです!

膵臓がないのですよ。

五行に膵臓がないという事は、どういうことか?

五行というのは、自然界の法則が5つに分けて考えられるという

発見したのですね。

人間の身体の中の状態、季節等の外界との影響、

そして、人間の身体と外界との関係を5つに分けられたのです。

つまり、機能で5つに分けたのですね。

 

一説に「漢方は解剖をしていないので、膵臓が見つけられなかった」

という方や「漢方は解剖をする技術がない」という方がいらっしゃいます。

 

ここに東洋医学の主な古典あります。

「神農本草経」(草や動物などの漢方薬の原料について植物学や効能効果を記した書籍)紀元前2,000年以上前

「黄帝内経」(生理学を問答方式で記した書籍)一世紀

「難経」(医書)二世紀前半

「傷寒雑病論」(傷寒論と金匱要略を合わせ、生理学と治療方法を記した書籍)二世紀

 

この中の「難経」第四十二難(人体臓腑の解剖を述べています)を

ご紹介します。

 

四十二難曰、人腸胃長短、受水穀多少、各幾何。

然。

胃大一尺五寸、径五寸、長二尺六寸、
横屈受水穀三斗五升、其中常留穀二斗、水一斗五升。
小腸大二寸半、径八分分之少半、長三丈二尺、
受穀二斗四升、水六升三合合之大半。
回腸大四寸、径一寸半、長二丈一尺、
受穀一斗、水七升半。
広腸大八寸、径二寸半、長二尺八寸、
受穀九升三合八分合之一。
故腸胃凡長五丈八尺四寸、合受水穀八斗七升六合八分合之一、
此腸胃長短、受水穀之数也。

肝重二斤四両、左三葉右四葉、凡七葉、主蔵魂。
心重十二両、中有七孔三毛、盛性汁三合、主蔵神。
脾重二斤三両、扁広三寸、長五寸、有散膏半斤、
主裹血、温五蔵、主蔵意。
肺重三斤三両、六葉両耳、凡八葉、主蔵魄。
腎有両枚、重一斤一両、主蔵志。

胆在肝之短葉間、重三両三銖、盛性汁三合。
胃重二斤二両、紆曲屈伸、長二尺六寸、大一尺五寸、
径五寸、盛穀二斗、水一斗五升。
小腸重二斤十四両、長三丈二尺、広二寸半、
径八分分之少半、左廻畳積十六曲、盛穀二斗四升、
水六升三合合之大半。
大腸重二斤十二両、長二丈一尺、広四寸、径一寸、
当斉右廻十六曲、盛穀一斗、水七升半、
膀胱重九両二銖、縦広九寸、盛溺九升九合。

口広二寸半、唇至歯長九分、歯以後至会厭、
深三寸半、大容五合。
舌重十両、長七寸、広二寸半。
咽問重十二両、広二寸半、至胃長一尺六寸。
喉嚨重十二両、広二寸、長一尺二寸、九節。
肛門重十二両、大八寸、径二寸半、長二尺八寸、
受穀九升三合八分合之一。

 

以上が全文ですが、一つを訳すると以下になります。

 

「膀胱は腎臓の腑で下腹部に在り重さ九両二銖(現在の重さで9.8g)、

縦広九寸(現在の長さで19.8cm)、溺(尿)九升九合(現在の容量で198cc)

を盛ると残されています。

黄帝内経の「霊枢」の平人絶穀篇第三十二

胃腸の容積と内容物の量、及び排泄量が記載されています。

胃は、周りが一尺5寸、長さが二尺六寸ありまして、横に曲がっていて、飲食物を三斗五升収めることができる。その中には、食物が二斗、水が一斗五升入るといっぱいになる。

腸の中で小腸は周りが二斗半、直径が八分と三分の一、直径が八分と三分の一、長さが三丈二尺あり、食物を二斗四升と水六升三合三分の二収めることができると記載されています。

この文章からみても解剖が行われてないという

事は考えにくいと思われます。

前出の黄帝内経(約2000年前)でも骨の中に髄があると記述されています。

現在のような解剖を主とした解剖学ではなく、

陰陽五行が基本となった解剖学であるのです。

 

解剖学を主とした西洋医学は、独自に発展し、

色々な発見があり、命を守ってきました。

 

一方東洋医学は、バランス医学として

研究、臨床の積み重ねで現在に至っています。

それぞれの特徴を活かしたいですね。